いろいろ感想とか

備忘録的な意味も兼ねて、いろんなものの感想を書いていきます

ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない(ゲーム版) 感想

標記のゲームについて、vol.1~3,0までプレイし終わったので記事を書いていきます。


まずは全体的な軽いまとめから。
イラストのクオリティが高く、また文章も読みやすくてスラスラとプレイできました。この物語における主人公の状態(ステータス)はタイトル名どおりで、ときおり欲望のままに振る舞いつつも無秩序というわけでもない、けど基本はぶっきらぼうな、そんな人でした。私は嫌いではなかったです。むしろ凄いなと思った場面もありました。


以下、テキトーにネタバレ込みで感想をつらつらと書いていきます。

冒頭に書いたとおり、綺麗なイラストが多かったです。私も最初このゲームが目に付いたとき、サンプルCGを見て「すごい良いなぁ」と思いました。どういうのが良いかは個々人の好みもあると思いますので、よかったらぜひ販売ページを見てみてください。さてその中でも、特にエ○シーンは差分も多くて力が入っていたと思います。買う前に多少ストーリーの評判も調べたとはいえ、半分イラスト買いしたと言っても過言ではない私としても、とても満足でした。それとゾンビについても、ふつうの個体と比べて一部強いやつが何人か出てくるんですが、その人たちのイラストがこれまた迫力のあるものになっていました。ご参考になれば。

ストーリーについてですが、この手のやつをあまり数見てないので、展開がよくあるやつだとか、逆に奇をてらってるとかは正直分かりません。けど「いつ襲われるか分からない・どこから出てくるか分からない」、そういった緊迫感をイラスト・bgm込みで味わうことは出来ました。文章(シナリオ)も読みやすくて、途中で一旦放っぽったりしがちな私でもこうしてきちんと読了して感想を書くことが出来ました!() 物珍しさもありつつ、コロナ自粛とゾンビ徘徊、どちらも外に出られないという状況が少し似ているから、多少なりとも作中の人物の気持ちが自分でも分かるところがあって、それで読みやすかった…という部分もあるかもしれません。それと、物語中にときおり出てくる各種設備(フォークリフトやボートなど)について、描写が詳しく書かれていて、素人の私には知らなかったものばかりでした。もちろん知ってる人からしたらどう思うのかは分かりませんが。

でまぁ主人公なんですけど、簡単にどんな人かって言われたら先ほど書いたとおりです。けど私は働き者だなって思いました。ゾンビの出現で交通も経済も他のことも、そのほとんどが機能しなくなった社会で、特異な体質を得たことによって自分一人だけは安全に暮らしていくことが可能である。やろうと思えばもうこの先ずっとひたすら怠惰にだって過ごせるのに、あちこち動き回っているんですから(それも自分のためといえばそうなんですが)。私は「時子ちゃん(ヒロインの一人で、武村さんの隣人)と二人で暮らすだけが一番楽そうなのに」ってちょっと思ってました…笑 けど武村さんは生き残った人間を活用するためにスーパー内をきちんと拠点にして、色々調べて山での生活を試みたり、自衛隊駐屯地に乗り込んで自衛隊の行き先を探ったり、市役所を出ることになったときの準備についてなどを模索していました。本人は度々利用されっぱなしはごめんだと言いつつも、結果的には残された少ない人間たちのための行動をしています。人間が絶滅するのを黙って見過ごすほど社会性が無い、あるいは自堕落ではないんですよね。それに隆司(ヒロインの一人である深月の弟。医療資源が乏しく、病気が悪化してしまっていた)の手術だって、本を読んで自分でやろうとしていました。それまでを見てる感じだと、武村さんがここまで隆司の命にこだわるのは若干無理があるような…?って私は思ってました。唯一のお医者さんである牧浦先生(本作におけるヒロインの一人)だってすでに限界間近でどこまでやれるのかっていうところは武村さんも分かっていたでしょうし。諦めはしないでも、医者・設備その他もろもろの問題を考えたら、積極的にどうにかしようと動かなかったとしてもそれはそれでやむなしと言ってもおかしくはない状況だったと思います。知性体(ふつうのゾンビには襲われない武村さんでも襲われる可能性のある、より知恵を付けたゾンビの総称)の存在もありました。けど変なところで律儀な武村さんは結局敢行してしまい、そこがまた牧浦先生が武村さんに惹かれた要因だったりするのですが。まあ武村さん自身、自分が手術をしたところで隆司を助けられないことは分かっていて、それでも一応「やることはやったという言い訳作りのためにやってる」とは言っていました。けどみんながみんな武村さんと同じように病人と医者を連れて安全地帯から抜け出すかっていったらたぶん違うと思いますし、その中でも隆司への麻酔の注射のために自分の身体で注射が上手く出来るか何度も試したりしていて、私的にはやっぱり武村さんって凄いなって思いましたね(ひたすら怠惰になられたら物語にならないって言われたら、それはそうなんですが)。

さて、ちょうど話に出てきたので、次はこの話題に移りたいと思います。先ほど少し書いたヒロインの一人である深月の弟・隆司の手術をするところが、本作の中で私にとって一番印象に残る場面でした。
それはここがゾンビが急に現れるのと同じくらい、命の懸った切迫した場面で、ただ文章を読んでるだけなはずのこっちまでハラハラして、さらに圧倒的な条件の悪さの中で手術を行わざるを得ないために医師である牧浦先生の緊迫感が伝わってきたからです。
もし専門的な知識をお持ちの方がここを読んだなら「なぁんだ」ってなるくらいかもしれませんが、医療ドラマすらほとんど見ない私としては緊張しっぱなしでした。さてまず圧倒的な条件の悪さとは、手術を行うに当たって、人員が年数のごく浅い産婦人科医師とただの素人の2人しかいないこと。その中で何を用いてどういった手順で手術を行い、実際に執刀がなされるときはどういった役割分担をするのか。また実際に手術を行うときも助手がいないため諸々の確認作業などを一人で請け負わなければならないこと。これだけでも大変なことです。そして手術も終わろうかというときに、隆司の熱がだんだん上がってくるという事態が発生しました。そのとき牧浦先生はこの状況で起こりうる症状、およびその対処について頭の中でたくさんの可能性を絞り出していました。このように隆司の手術の場面では、たくさんの知識をもととして、これから行うことや現在起こっていることについて様々な可能性を考慮しながら正解だと思われる選択を導き出していくシーンが数多くありました。
これを見て、私はお医者さんがいかに大変な職業なんだろうと思わずにはいられませんでした。まずはたくさんの知識が必要です。しかもこれはどんどんアップデートしていかなければなりません。加えて、冷静かつ的確な判断力、そのための頭の回転の速さ。不測の事態が起こったとき、そこで何が起きていてるのか?何が起きているか把握したとしてどうするのか?それが分からなければ何も出来ませんよね。そして何より他人の命を預かり、その他人の身体を自らが扱うということに対する精神的な強さです。
まして牧浦先生は彼女がいたコミュニティ(市役所。生き残った人間は市役所に集まって立てこもっていた)の中で唯一のお医者さんであり、またそのコミュニティの中でも実質リーダー的な役割を担っており、それらが過労・心労につながって不眠症になったり、鎮静剤を飲んでいる程でした。すでに摩耗しきっている中でさらにこのような重大事に臨まなければならないという状況だったのです。
正直に言って、私はこの隆司の手術の場面で怖いやら緊迫感やらで涙が出てしまいました。と同時に、もし自分がこれからこんなふうにお世話になることがあったらお医者さんや看護師さんにしっかりお礼を言わなくちゃいけないなとも思いました。
以上のように武村さんの一応は筋を通そうとするところや、緊迫感ある牧浦先生の手術などがとても印象的なシーンでした。

…なんか言いたいこと大体言っちゃった感があるのて、ここからはざっと各キャラたちの振り返りをしたいと思います。

調達班のネームドキャラはみんな優秀な人たちでした。社長は功績に驕らず人格者で、さすが社長の職に付いてる人は違うなぁって感じでした。佐々木もとても頼れる人でした。人柄もしっかりしているようで、さらに元自衛官ということで武器の扱いにも長けていて、戦闘での貢献は一番だったのではないでしょうか。人間の反乱分子の鎮圧もこなして、終わってみれば意外とあっさりだったなーって感じでした。工藤はいかにもやんちゃさんって感じなんですが、戦闘も出来るし、元美容師で髪も切れるし、ここまで死線をくぐり抜けてきているのもあり、精神的にもしっかりしてるところが窺えて良いキャラでしたね。小野寺は最初頼りなげな描写がされた後、危険がひしめく街への食糧調達に立候補して「これやられ役なのでは……」と思ってしまったのですが、きちんと活躍して無事生還しました。とても勇気のある人です。

深月は本作のメインヒロインで、vol.1と3で特に出番が多かったのですが、私としてはvol.1のときが一番思い入れ深かったです。ただvol.3でも大事なシーンが多くて、「守られてばかりじゃいられない」と危険を顧みず自ら行動するなど、深月の精神的な成長が見れたり、武村さんを健気に慕っているところで彼女の魅力が出ていたと思います。「優がこ○されたとき、隣にいてくれたのは誰だったんですか!」(うろ覚えですみません)の台詞は良かったですね。

時子さんもヒロインの一人で、もうゾンビになっちゃって会話が無いのが惜しいですが、そんな自我の無いはずの状態だけど武村さんのことを気にかけてるのが窺えたりと、出番が少ないながら、彼女のことが好きになれるシーンもしっかり用意されています。それに実質武村さんが一番最初に接触したヒロインで、武村さん自身もなかなか思い入れを持っていました。…まあ彼女えちえちですし(身も蓋もない)。

牧浦先生はvol.2のメインでしたね。逆にvol.3ではほとんど出番が無くて「最早忘れられてない?」くらいの感じだったのが残念でした…。生きてはいるはず(死んだという描写は無いので)なのですが、深月が物語の中で完全にヒロインにおさまっちゃったからですかね…。牧浦先生ルートに行く選択肢もあってよかったのに…(ただの願望)。
牧浦先生は、さっき散々語りましたが、精神的にもボロボロでギリギリの線にしがみつきながらも、結果として隆司の手術を成し遂げます。そんな、脆さの中に精一杯の強さを見せてくれました。ギリギリの状態ながらも踏みとどまって頑張る、そんなところが彼女の魅力だと思います。あと印象に残っているのは、vol.0で「雄介(武村さんのファーストネーム)と同じ病院で働いているということに牧浦は感動を覚えた」という地の文ですね。おそらくこれはあの状況で牧浦先生の思い描いた幸せの形なのでしょう。世界がこんなことにならなければ起こり得ないことではあります(そうでなければ牧浦先生と武村さんは出会うこともなかったから)。ですが、牧浦先生はお医者さんをすることに大変さを感じつつも、やりがいを持っていて、そんなお仕事を自分が好意を持っている人間と行える…すなわち一つのことに向かって共に励み、同じ時間を過ごし、その中で関係性を築いていく(いける)ことにある種の感動を覚えたのではないでしょうか。えぇ、それはなんと素晴らしいことでしょう。学校や部活、お仕事をやっていく中で仲間、気の合う友達が出来たというのと同じようなものだと思います。


さて、こんなところでしょうか。こちらの作品、もとは小説で一応未完らしいのですが、長いこと続きは出ていないそうです。もしまた将来この続きが出たら読みたいなーと思っています。

それではここまで読んで下さった方、どうもありがとうございました。